さくらさくら2009

  • 26 千鳥が淵の月
    この季節だけは日本人に生まれてよかったと思う。

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2008年4月30日 (水)

ミュージカル「Zorro」舞台レポ(第2幕その1)

第2幕
第1場

暗闇に包まれた舞台中央に黒いブーツに包まれた足が次第に明るくなるライトに、浮かび上がって来る。すると、その右足が、ダーンッ!と強く足踏みされ、その大きな音に、場内は一気に凍りつく。舞台上に、四角い板張りの小舞台が置いてあり、音がことさら反響するようになっているのだ。
続けて、ダンッ!ダーンッ!!と激しい両足踏みが続き、それに荒い息が重なる。
次第に強いリズムで足踏みが早くなり、その足の後ろの、椅子に座っている人物が明るくなるライトの中に輪郭を現す。ラモンだ。黒いブーツに白いズボン、上半身は、血染めの白い大きな布で覆われている。
ひとしきりの激しい足踏みの後、荒い息から、ため息のようなうなり声のような声が漏れ、半音の節回しの哀切なメロディをきざんでゆく。
♪ La Ira De Ramon
両手を差し上げパシパシと指を鳴らしたかと思うと、布をさっと取り去り、苦悩の表情で、手を広げて天をあおぐ。その胸には、大きく血でかたどられたZの文字。
すぐに下向きに伸ばした両手を交叉するようにして胸を隠し頭を垂れる。
このZが、大変リアルな傷で、ただ描いてあるわけではなく、ギザギザと盛り上がり、しかも、赤い血が白いズボンにまでしたたり落ちて赤く染まったりしているのだ。間近で見ても、実にリアルで痛々しい。
ギターがジャランと和すと、正面を見据え、椅子にかけたまま踊りだす。ラモン/アダムの一番の見せ場。アダムのために付け加えた事が明白な場だ。
両手を差し伸べ、その手をかえし、自らの額を激しく打つ。さっと立ち上がり、大きく手を振りかぶって、強いステップで足踏み。
椅子を後ろに投げ飛ばし、嘆くような、うめくような声をあげつつさらに手を振りかぶって足踏みし、踊る。フラメンコのタップだが、ブーツのかかとで打つその強いタップ音は、劇場中に大きく反響して耳を打つ。激しく回転し、ぴたり、と止まると、こぶしを挙げて、エル・ゾロー!!と絶叫。そして、もう一度絶叫。ラモンの怒りがびしびし伝わって来る。
最後は、また声をあげながら、はげしく回転する。挙げている声に歌詞などない。ただ、怒りの絶叫だ。
激しい回転で、腰の赤いサッシュが水平になり、髪を結んでいるリボンはほどけて乱れた髪と共に首に巻きつく。そして倒れこむ。
場内、われんばかりの拍手だ。
4分にも満たないほどのダンス場面だが、きわめて強い印象を残す踊りだ。
倒れこみ、荒い息をついているその場にガルシア軍曹が出てきて、ラモンの胸の傷を見て、やや躊躇するが、ラモンに声をかける。ええと、大佐殿、皆が祭りを始めてもいいかときいています。はっと向き直り、ガルシアをにらみつけ、立ち上がりざま、よし!と一言いいおいて立ち去る。

舞台暗転

第2場
客席舞台近くの両側の扉が開き、心浮き立つようなリズムと共に、祭りの行列が客席に繰り出して来る。
♪ The Fiesta
皆、顔の上部のみおおう奇妙な仮面に、色とりどりのリボンを髪のようにつけて垂らしたものをかぶっている。手に持った鐘をたたき、声をあげて踊りながら客席のサイド通路一杯にならび、客席最前列前を、大きなマリア像をみこしのようにささげ持った行列が横切り、階段を上がって舞台上に練り歩いて行く。舞台いっぱいにそろうと、華やかに祭りの歌と踊りの群舞が繰り広げられる。
その背後の建物のバルコニー通路には、険しい顔つきのラモンが出て来る。白いシャツの胸ははだけ、黒いスカーフは、首に一巻きした先は、ほどけて両側に長くたれ、髪を結んだリボンもほどけて垂れたままだ。はだけた胸にちらりと赤い傷跡が見える。険しい顔つきで、誰かを探す様子。
群集は、にぎやかに祭りの踊りを繰り広げる。ここの群舞は非常に楽しい。
祭りの中にルイサが混じって、やはり、誰かを探している様子。隅から、ディエゴが出てきて、すばやくルイサに近づく。
「ここで何している?危ないから、こんなところに居てはダメだ」
と声をかける。
「あなたこそ、ここで何しているの?どうして私にそんな忠告するの?」
「僕を信じて、ついて来てほしい」と言われて、
「皆、あなたを信じていたのに、裏切られたわ、あなたはいったい何しているっていうの?あなたは何者なのかどうか教えて!」
ディエゴは、悲痛な表情で、
「今は言えない、それでも僕の言うことを信じて、いや、“僕たち”のいう事を、だ」
ルイサは、それをきいて、
「え?え?それどういう事?」と問い、奥へ消える。
それを、ラモンが背後の建物の高い位置から、見ている。
祭りは、にぎやかに続く。
イネスがやはり、建物の高い通路に出てきて、祭りをながめているのを認めたラモンは、つかつかと歩み寄り、「ヘイ!ジプシー!」、と声をかける。
「お前は何か知っているはずだ。私に知っていることを言え!」と詰め寄る。
イネスは、ラモンを見やり、
「そう、確かに知っているわ、でも私はあなたに教えたりしない、誰もあなたなんか、尊敬していないし、誰もあなたのためにスパイなんかしない」と鋭く言い返す。
ラモンは、イネスをつかんで引き寄せ、
「お前に選ぶ権利なんかない。いいか、あの男が死なない限り、私の仕事は済まないのだ。仕事が済めば、私は結婚する。それが出来なければ、お前がかわりに死ぬのだ。」
この時、ラモンは、イネスを顔が触れそうになるほど引き寄せ、しばしにらみ合うのだが、イネスは、恐れと同時に、憐れさをも感じているような表情でラモンを見つめる。
イネスは、いつも猛々しくふるまっているラモンに憐れさを感じ、惹かれているような雰囲気を感じさせ、ラモンも一瞬、イネスのその目をのぞき込み、ただならぬ雰囲気をかもす。しかし、緊張の一瞬は過ぎ去り、ラモンは、突き飛ばすようにイネスを離すと、奥へ立ち去る。
この複雑な感情の設定は面白い。

祭りは、ますます盛り上がり、大きな角のついた牛の頭の仮面をかぶった人々がそろって楽しい群舞を繰り広げる。
ラモンは建物の高い位置から監視を続け、はしごを降りたりあがったり、眼下の祭りの群集に目を光らす。
ガルシアが、イネスに近づき、
「僕と踊ってほしい」と言うが、イネスに、
「ラモンの手下で居る限り、あんたとダンスなんかしないわ」ときっぱり拒否される。

祭りの人のうずが広場をまわり、従者チェゴが、ゾロのような帽子をかぶって、浮かれながら出てくると、隅からラモンが素早く出て来て捕まえて、後ろから腕で首を締め上げ、
「お前、この帽子はどこで手に入れた?ゾロの居場所は?ヤツの友達か?」と問い詰めるが、その腕に噛み付かれ、「アウチッ!」と離して逃げられてしまう。ラモンが追うが祭りの人々の間でたちまち見失う。

ガルシア軍曹は、ビール片手にやけくそ気味に飲んでいるが、ラモンはガルシアを見るなり、近寄って行って締め上げ
「お前、何しているんだ!?」
ガルシアは、
「な、何もしていません!祭りに来ているだけです!」
ラモンは、さらに締め上げ、
「だいたい、お前が祭りの中にゾロが来るかもしれない、と言ったのだぞ」と言うのに、ガルシアは、
「そう誰か言っているのをきいたのですよー」、と泣く。
「いつ?」と問うと「2日ばかり前です」「本当だな?」「本当です」
「よし、お前を信じよう」とガルシアから手を離すと、
「これが本当なら、お前が望む昇進を、させてやろう」と言い置いて、立ち去る。
祭りは続き、イネスが、隅に居たルイサを見つけて近寄る。
「ちょっと、あなた、こんなところに出てきていたらあぶないのよ、ラモンがあなたを探している」、と言う。
ルイサはけげんな顔をするが、
「私は、たしかに、あなたが憎いわ、でもラモンが言う将来も恐ろしい、私を信じて、ここから早く逃げて!」
ルイサは、あわてて立ち去る。

祭りも佳境に入り、男性の踊り手中心に激しいフラメンコが始まる。3人の男性が中心に来て、ひとしきり情熱に満ちた切れの良いフラメンコを踊る。
このフラメンコは、実に見せてくれる素晴らしいものだった。中でも、中心で踊る男性ダンサーの一人がひときわしなやかな動きと鮮やかなステップで目をひいた。彼は、最初の始まりの場面で、フラメンコを踊っていた踊り手だ。彼の踊りから目が離せなくなるほどのものだった。
今度は人々の間から、ゾロが現れると、ガルシア軍曹に近づき、ぐいとつかんで壁の隅に押しつけ締め上げて、
「お前、この戦いで、いったいどっちにつくつもりなんだ!」とすごむ。
「どっちが正しいのか、自分で考えろ!」と吊り上げられるほど、締め上げられ、
「さあ、どっちを選ぶ!ラモンかゾロか?」と問い詰められ、
「ゾロです!」と叫ぶ。ゾロは、よし、とうなずき、素早く消える。
ガルシアは、イネスに振られ、立て続けにラモンとゾロと両方から締め上げられて、すっかり意気消沈の体。フラメンコが再び続く。
ビール片手に広場の隅で浮かれていた兵士が、背後から祭りの仮面をかぶった何者かによってなぐられ、引きずられて行ってしまう。
踊る人々が、少なめになると、ラモンが、建物のバルコニー通路に現れ、仮面をかぶった4~5名の兵士たちを呼集し、敬礼して立つ兵士たちに、
「明日、日の入りに、囚人を一人山へ移送する」、と申し渡す。
敬礼してラモンの指示をきいていた兵士たちは、仮面をかぶっていても、体形からあきらかにガルシア軍曹とわかる者も居るが、ラモンが立ち去った後、一人の兵士がそっと仮面をはずすと、それはディエゴだった。
「明日の夕刻か」、とにんまり。
衆人の中での秘密指令はおかしいが、これは実はラモンの作戦だったのだ。

こういう祭りに混ざる会話の時、話をしている当人たちにのみ照明が当たり、祭りの人々への照明は消えて闇に沈み、ピタリと動きを停止している。祭りの群集のみ一時停止し、会話のみに注目出来るようにした演出で、わかりやすい。祭りは続き、フラメンコが終わると、次は大きな張りぼてのランタンをささげ持った人々が繰り出して、さらに広場は、にぎやかに盛り上がりだす。

ラモンが再び背後の建物のバルコニー通路に出てくると、大声でどなる。
「もう充分だ!! 祭りをやめろ! 皆ここから出て行け!!」
一気に人々は静まり、一人二人、ゾロ、万歳!などと言うが、出て行けー!!と叫ぶラモンの声で、潮が引くようにすみやかに引き上げて行く。
高い位置からにらみすえているラモンは、一人、うろうろと残っている人物に、
「おい!そこのヤツもだ!」と鋭く声を浴びせるが、男が被り物を取ると、ディエゴだった。
あはあ、と気が抜けたようにせせら笑うと、
「ディエゴ、お前か」
ディエゴは、
「ああ、俺さ、おおいに祭りを楽しんだよ」とラモンを見上げ、
「あんたはなんだか、ずいぶん大変な目にあったそうで、忙しそうだな」、と言う。
ラモンは、はだけたシャツをかき寄せて傷を隠し、
「お前は、本当に気楽なヤツだな、私の苦労など、何も理解出来んだろう、幸運なヤツだよお前は」と言うと、
「アディオス」、と立ち去る。
しかし、この祭りの場面は、あまりに色々の出来事を詰め込みすぎだ。

第3場
人々は、立ち去り、がらんとした広場にディエゴが立っている。そこに、後ろの建物から、祭りのリボンひらひらの被り物をかぶった小太りの男が、べろべろになって歌を歌いながらよれよれと出て来る。
ディエゴは、
「ああ、ガルシア軍曹か、祭りを楽しんだかい?」 と声をかける。
「俺が楽しんだって?とんでもない!」
被り物を脱ぎ捨てると、
「ああ俺の将来はない、何やっていても、いつだってガルシア軍曹じゃなくちゃダメなんだ」 などと言いながら落ち込んでいる様子。
「それのどこがダメなんだ?どうした?」とディエゴがたずねると、
「何がダメかってきくなら言うけど、俺たち皆が馬鹿ものだからさ。世の中には、こんなにきれいな女があふれているっていうのに、何も出来ないんだ」 などと言う。
「だいたい、どうやって女の関心をひいて、その愛を得られのやら、さっぱりわからん。ああ、彼女の美しいこと!」
どうやら、ガルシアは、イネスにふられた事が一番こたえているらしい。
「他のことは、力になれないが、女の口説き方なら、まかせておけ、俺が教えてやるから、よーく見ていな」 そうディエゴは言うと、
「まず、女の目をしっかりと見ながら、そばへ行く。目をしっかり見ているのだぞ」
とびっくりしてまんまるにしているガルシアの目を見つめる。
「それから、何も言わずにゆっくり、ゆっくりと振り向かず、立ち去るのだ」
とスローモーションのような動きで、ガルシアの前から歩み去る。
「そこで、ピタリと止まってターンする」
と振り向くと、またすっかり魅入られて注目しているガルシアに向かってゆっくりと引き返し、
「そこで、目を見ながら、ぐい、と顔を近づけて」
とガルシアに寄り添い、
「手をさしのべて、頬をなでる」
と片手で頬をなであげ、
「抱き寄せて、体をつけて、軽くキス」
とガルシアに腕をまわして抱き寄せ、
「こう、腰をくねらせる」
と体につけた腰をゆっくり1回、2回、3回とまわす。
「しっかり目を見つめる」
と抱き寄せたガルシアに顔を寄せる。
客席は、もう笑いの渦
抱き寄せられたガルシアは、ディエゴの腕の中でうっとりと顔を見上げていたが、その胸に手を置くと、なでさすり、とうとう
「I Love You !」
と言ってしまう。
「ちょっと、ガルシア軍曹!!なんですって!」 と怒ったような声に飛び上がってディエゴから離れて振り向くと、イネスがそばに立っている。
一部始終をそばで見ていたのだ。むろん、ディエゴがからかっていると十分承知で、イネスが居るのに気づいたディエゴと、目配せなどしていたのだが、ガルシアは、パニックだ。
イネスは、わざと、
「まあ、あなたは、てっきり、この私に気があるものとばかり信じていたのに、なんて事でしょう。あなたがそういう秘密を持っていたなんてショックだわ」 などと大げさにがっかりしたように言う。
ガルシアは、とんでもない、というように首をふったり手をふったり、あたふたしているが、どう言い訳したものか、言葉も出てこない。
イネスを見、すまなそうにしているディエゴを見、口を開きかけるが、うめくような声を出して、やがてガクリと肩を落とし、すごすごと立ち去る。ディエゴとイネスは、吹き出してしまう。罪な人たちだ。ああ、やれやれとそばの椅子に腰掛けたディエゴに、イネスが近づき、
「あなた、最近、変わってきたわね」 と話しかける。
「私は、あなたの秘密を知っているのよ」 とイネスが言う。
ディエゴは、ギクリとしたように、一瞬椅子から腰を浮かせるが、イネスが続けて、
「あなたは、ルイサのこと、深く愛しているのじゃない?」と言うのをきくと、
「ああ、それか」 とやや安堵の様子で、椅子にかけなおす。
だが、「そう確かに・・・」 と帽子を脱ぎ、沈み込む。
「その気持ち、ちゃんとルイサに伝えるべきよ」 とイネスは言い置いて立ち去る。
一人残されたディエゴは、自分は、愛を打ちあけるにふさわしい者になのか、と歌う。
♪ A Love We’ll Never Live

舞台暗転

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