さくらさくら2009

  • 26 千鳥が淵の月
    この季節だけは日本人に生まれてよかったと思う。

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RUSSELL MALIPHANT 公演レビュー

RUSSELL MALIPHANT 公演レビュー(by み~さん)
2009年4月9日~11日 ロンドン・コロシアム劇場

2009年、4月7日~11日まで、ロンドンのレスター・スクエア近くのロンドン・コロシアム劇場にて、RUSSEL MALIPHANTの“TWO : FOUR : TEN”公演にアダム・クーパー出演というので、9日から11日まで、計4公演観賞した。ミュージカルではなく、純粋なダンス公演にアダムが出るのは、本当に久しぶりであり、おおいに期待もしたが、観賞後感想としては、復活舞台として期待にたがわぬものを見せてもらったと思う。

演目は、“KNOT(2001)”“SHEER(2001)”“TWO×TWO(2009)”,休憩をはさみ、“CRITICAL MASS(1998)”の4部構成により、舞台は極めてシンプル、一部にフラットな四角い台が使われたくらいで、踊り手の肉体と、照明の変化で見せるものだった。

振り付けはすべてRussell Maliphantによるもので、彼独特のスピーディーな太極拳といった印象のもの、音楽は現代作曲家たちによる、各作品オリジナルだが、アダムたちの踊った“CRITICAL MASS(1998)”の作曲家は、3部の“TWO×TWO”と同じ作曲家と、他の作曲家の組み合わせたものだった。

注目したのは、衣装デザインが日本人女性(Kei Ito)だった事。
黒、ないしグレーのシャツとパンツの基本形で、シンプルな舞台に合わせたものであったと思うが、舞台は暗く、踊り手のみに当てるスポット照明主体で、暗色の衣装は暗闇に溶け込んでしまい、残念ながら舞台全体に華がない暗い印象が持たれた。
アダムたちの衣装に関しても、同行者たちによる狭い範囲の批評ではあるが、評判は良くなかった。彼らもまた裸足に袖まくりした裾出しシャツとズボンという基本形だったが、色は上下ともブルーグレーで、シンプルというより一昔前のアジアの港湾労働者のようだった。

アダムの出演した、“CRITICAL MASS”( 臨界最少必要量とでも訳すのか)は、休憩後の最終演目としてMaliphantと2人のパ・ド出演だった。
この作品は、ストーリーといったものはないが、「起・承・転・結」的展開で、2人の優れた表現者たちの感情の掛け合いと、それによって起こる新たな感情作用の身体表現といった趣きのもので、2人の“ハッ!”“ハァッ!”という気迫の掛け声も聞こえて、熱い圧倒的なエネルギーの波動が客席に伝わり、30分という時間を一気に見せられた。

おおむねのダンス展開について、記憶する限りのものを述べてみる。

暗いサイレントな舞台に佇む男性2人にスポットライトが当たる。右側アダムで左側は、剃頭のMaliphant。2人ともガタイが良く(アダムの方が、やや背が高い)、立っているだけでも、目が惹き付けられる。低めのハミングのような2分の1拍子のリズムが聞こえて来る。おたがい向かいあい、手を差し伸べて2人からまり、地へ倒れると見せかけて、立ち止まり、そこにシンバルの激しいリズムが重なり高まると、アダムがMaliphantの右脇に頭を差込み、そのまま、身をゆだねて前に倒れるのを、Maliphantが片手で支えて引き上げる。(プログラム表紙の写真)
腕を引き合い、回転しからまり、2人そろって舞台左側を指し示す。
リズムは次第に早く激しくなって行き、頭を差込み、身をゆだねて倒れて、からまり、指し示す振りを10回以上もしつように繰り返し、いやおうにも感情が高まる。最後の指し示す2人の動作が次第にずれていくと、2人はすっと離れて暗転。

スポットライトが当たると、2人はゆるやかに揺れている。静かに見つめあい、なんとなく絡まりあう。虫の音のような、遠い汽笛のような音の混ざる曲にあわせ、おたがいを手で絡めとリ、持ち上げ、背中あわせになって添いあげる。
ふいに、曲が変化し、アジア的歌謡曲のような曲調になると、たがいに向き合いしっかりと手を取り合って、ボールルームダンスを踊りだす。これには、客席から笑いがもれた。
どちらが男役女役ともいえない、濃密なタンゴ調を2人で踊り、足を蹴り上げ、おたがいを交互にリフトし、背中に乗って回転して降りるなど、あのマシュー・ボーンの「白鳥の湖」の王子とのパ・ド・トゥの振りがふんだんに使われていて、曲はともかく、ハネムーンのような妙にどきどきする濃厚な場面が続いた。
これは、Maliphantがあえて入れたのか、あるいは、アダムが入れるようにしたのか、そのあたりの事情は知らないが、白鳥からアダムファンになった者としては、こたえられないものがあった。
2人並んで客席に向かって腹ばいになり、組んだ両手を前に揃えて、まっすぐ顔を上げて前を見つめるなど、部屋でくつろぐカップルのような場面もあり、アダムがMaliphantの背にくるりと乗って起き上がると、すぐにMaliphantも後を追い、また、絡まりあうような振りが続いて、暗転。

舞台中央にスポットライトが当たり、アダム一人が立っている。音楽が、再び無機質なリズムに戻り、大きく空に手を伸ばし、その長い腕を、何かを振り払うように振り回す。ラジオ放送のような人声がリズムに加わる。暗闇の舞台にアダム一人が浮き上がり、伸ばした腕を大きく激しく回すと、回す腕の軌跡残像がくっきりと目に残り、まるで翼のように見えた。気持ちを振り払うように、一人腕を回すアダムを、舞台奥に照明がぼんやりと当たって、Maliphantがじっと見つめて居るのが見えた。
Maliphantは一人踊るアダムに駆け寄り、手を取り、2人ころがり、立ち上がるとつないだ手を放さず、離れた気持ちを取り戻そうとするかのように、頭をすりつけ、交互に抱き、また濃厚な雰囲気をかもし出す。ただし、照明はブルー。やがて2人同じ振りで踊りだして、ぴたりと合ったところで、暗転。

最初の低いハミングが刻まれる曲に戻り、最初の振り(アダムが頭を脇に差し入れ、身を預けてMaliphantが片手で支える)が繰り返されて互いに同じ方向を指し示して、それから、ふいに2方に分かれて、暗転。

舞台に照明が戻ると、2人が中央に立っており、歓声と拍手の中でのカーテンコール。幕はないので、幾度か後ろへ退いたり前に出たり。
アダムのシャツの胸のあたりは、かなりの汗じみが出来ていた。
全30分ほど、踊りどおし。おおいに見ごたえのある舞台だった。

☆み~  2009/04/30

【公演情報】
Russell Maliphant - two : four : ten
期間:2009年4月7日~11日
会場:London Coliseum
(English National Opera公式サイト )
http://www.eno.org/index.php
St. Martin's Lane, Trafalgar Square, WC2N 4ES
振付:Russell Maliphant
照明:Michael Hulls
出演:Agnes Oaks, Thomas Edur, Adam Cooper, Ivan Putrov, Dana Fouras, Russell Maliphant

サドラーズの公演サイト
http://www.sadlerswells.com/show/Russell-Maliphant
Russell Maliphant公式サイト
http://www.rmcompany.co.uk/Site/Home.html